農業者(生産者)が日々の営農・経営で管理する情報を、業務カテゴリ別に整理した一覧。各項目について「何を管理するか(詳細)」「何のためか(目的・管理効果)」「現場の課題感」「実際に使われているツール」をまとめている。坂ノ途中の farmO をはじめとする生産者向けサービスの検討や、農産物流通システム一覧 と対になる生産者サイドの業務・システム地図として使う。

出典は青果流通業界の情報整理ファイル(社内、シート「農家さんの管理対象情報」)。課題感の( )内は個別の生産者ヒアリング元。ツール名・給付額などは記載時点の情報で、変動しうる。

カテゴリ早見

カテゴリ主な管理項目
栽培管理(生産管理・営農管理)栽培計画(作付け計画・作付スケジュール・生産計画)、圃場管理、作付マスタ管理(作物マスタ管理)、作業予定・作業記録・工程管理(栽培記録)、生育記録、土壌診断記録、農業資材・梱包資材、防除資材、農薬、肥料、農機、作業者マスタ
認証取得有機JAS認証、GAP認証
注文管理取引先管理、出荷可能数・在庫数管理、注文・出荷管理、収穫・出荷作業指示、契約栽培管理、作物・商品管理、栽培概要票
販売管理仕入・買掛金・支払管理、売上・売掛金・入金管理、納品書作成
会計管理財務会計、税務会計、管理会計、原価管理
納税・確定申告(カテゴリ全体)
人事・労務・総務(カテゴリ全体)
経営管理(カテゴリ全体)
認定申請・補助金申請就農準備資金(準備型)、認定新規就農者、認定農業者、その他補助金制度

栽培管理(生産管理・営農管理)

管理項目詳細・管理情報目的・管理効果課題感ツール備考・参考
<概要>・「栽培管理」という言葉の定義広い。・各圃場の栽培状況・作業状況を閲覧・メンバー間での共有できる。
・圃場や作物、土壌や作業状況などの見える化で栽培の効率化、品質向上に生かす。
・有機JAS認証やGAP認証の取得時の提出資料を簡単に作成するため。
・JAへの出荷時や、直売所やスーパーなどでの販売時に生産履歴の提出が簡単にできる。
・ツールは存在するが使い方が難しい。
・ツールの種類が多すぎてどれがいいか分からない。
・初期費用や月額利用料がかかる。
・多品目の場合に煩雑になる。
・Excel、スプレ
・アグリノート(ウォーターセル)
・みどりノート(株式会社セラク)
・アグリハブ(株式会社Agrihub)
・KSAS
・NORM
・agrion(ライブリッツ株式会社)
・栽培ナビ(パナソニック)
・facefarm(ソリマチ)
・トレサPRO(株式会社テクノネットワーク)
・ツールまとめサイト
栽培計画(作付け計画・作付スケジュール・生産計画)・年間の栽培スケジュールや作物選定などをスケジュールを決める。
・イメージとしては、横軸が時系列、縦軸が圃場で、作物と作業予定(播種、育苗、定植、収穫など)
・数年先までの栽培スケジュールを立てて、計画的な営農活動を実施するため。
・圃場ごとの栽培のスケジュールを立てることで、連作障害の対策を練ったり。
・ザックリとした計画は立てられるが、細かな情報を管理しようとすると途端に情報量が多くなって管理できなくなる。・Excel、スプレ・河井ファームさんの作付けスケジュール。
圃場管理・圃場面積、場所、水田、圃場や水路、道路の状況。・スタッフが増えた際に、圃場の場所が共有しづらい。
→mapなどで見える化できていたら、情報共有は便利そう。
・アグリノート
作付マスタ管理
(作物マスタ管理)
・作物情報、品種。
・どの圃場に作付けしているか、栽培方法など。
・少量多品目となるとマスタ登録だけでかなりの作業量になりそう。
作業予定・作業記録・工程管理
(栽培記録)
・いつ、どの圃場で、どの作物に対して、どんな作業をするか、作業をしたか。
・作業内容
→播種、耕起、定植、施肥・追肥、資材利用・マルチング、農薬散布、収穫など。アグリノート
・有機JAS認証やGAP認証の取得のための情報記録。
・日々の農作業管理や情報共有の効率化。
・栽培履歴の記録を簡単にしたい(長九郎農園)
・作業記録に時間がかかるのと、普段の業務に押されて記録を忘れがちです。写真等合わせて上手に記録したい。(島ノ環ファーム)
生育記録・アグリノートより。
・写真で情報を残せると分かりやすいかも。
・前年の生育状態の比較などで、施肥や資材利用など対策を検討する。
土壌診断記録・アグリノートより。・作物の正常な生育のために行う土壌診断結果情報を、圃場・時系列毎に蓄積・参照し、施肥などの対策を打つ。
・GAP認証取得でも必要になりそう。
・作付け前の土壌分析データに対しての施肥量と収量の相関を毎年貯めたい(ツチクレ)・土壌モニタリングシステム(rynun)
農業資材・梱包資材・農業資材としてはマルチ、防除ネット、支柱、ハウス部品など。
・梱包資材としてはボードン、シール、パックなど。
・資材の在庫管理とか発注なども管理項目として含まれるかも。
防除資材・天然素材のニームオイルなど。
農薬・殺虫剤、殺菌剤。
・有機表示できる農薬についての参考サイト。
肥料・有機肥料としては、米ぬか、油かす、鶏ふんなど。
農機・トラクター、耕耘機、マルチャーなど。
・利用した燃料なども原価計算時には知りたい。
・(クボタ)
作業者マスタ・氏名、能力など。

認証取得

管理項目詳細・管理情報目的・管理効果課題感ツール備考・参考
有機JAS認証・生産工程管理記録等の様式について
└生産行程管理記録
└格付管理記録
└出荷管理記録
・有機JAS精度を理解する
・生産した農産物を「有機農産物」と表示して出荷、販売するため。
・有機JASの取得によって顧客や販路を確保しやすい。価格も高く設定できるしブランディングにもなる。
・小売りでは有機JASがついてるだけで分かりやすいので売りやすい。
・農薬・肥料台帳、有機JAS栽培記録、格付記録等の帳票の作成負担を減らしたい。(田辺印の会)
GAP認証・参考サイト
・農水省のPDF、取得の流れ
・個人で取得するのは最低10万ほど費用がかかりそうで、個人顧客に対する認知度もまだ低いんじゃないかと思っている。団体で審査を受けると安くなるらしい。
・有効期限は2年間。
・審査に向けて必要な情報
└生産計画(品目、圃場収穫見込みなどの栽培計画。施肥計画。年間スケジュール。)
└記帳台帳(資材の使用実績。土壌などの圃場環境。)
・有機JAS同様、取引先や消費者は、食品に対し安全・安心であるという信頼を持つことができる。・審査に向けての必要情報の蓄積が手間。
・認証取得の費用が掛かる。
・アグリノート

注文管理

管理項目詳細・管理情報目的・管理効果課題感ツール備考・参考
<概要>・注文~収穫・出荷~納品書作成~入金までの一連の情報管理。・複数の販売先がある場合に、注文や出荷可能を集約して考えたいが、その管理方法がなかなかない。・Excel、スプレ
・れんらく帳
・ファーモ
・自社ECサイト、自社システム
・その他各社WEBシステム
取引先管理・販売先や顧客の名簿の管理。CRM。
出荷可能数・在庫数管理・収穫見込みと、販売先ごとの出荷可能数の管理。
※時系列として短期・長期どちらもある。
・在庫できる野菜であれば在庫管理も。
・取引先に出荷できる数を伝える。・取引先におおよその出荷予定数を伝える必要があるが、情報共有のフォーマットや時系列や連絡手段がバラバラで手間。
・おおよその出荷予定数の見込みが難しい。シーズンの始まりや終わりは特に数の見込みが難しい。
→取引先には確実に出荷できる数を伝えるが、実際に収穫してみると多く収穫できることもある。その野菜の販売も困る。
・出荷日単位の数の管理や、在庫であれば週量での管理したいなど、品目によって情報の質が異なる。
注文・出荷管理・各販売先ごとの注文情報と出荷情報。
・受注完了・出荷完了の報告。
・納品書や送り状、出荷伝票の作成も。
・クレジットなどの与信管理。
・取引先からの注文に対して、漏れなく出荷する。
・出荷スケジュールを事前に立てる。
・出荷伝票の作成が面倒なので簡単にできる方法があれば知りたい(長九郎農園)
・出荷実績などを効率よく記録したいが、多品目栽培に向いたツールがない(たなまち農園)
・お客様への日常的な出荷量ご案内を一元化したい(菜園『野菜と旅する』)
収穫・出荷作業指示・受注データから収穫、仕分けや袋詰めまでの作業指示を行う。・複数スタッフで出荷指示をする場合、作業指示の効率化につながる。
契約栽培管理・長期的な栽培・注文の契約。・計画的な営農・経営の実現。・買い手、売り手ともに契約の履行の管理が曖昧になりがち。
・買い手優位になりやすい。
・契約外の野菜の販路に困る。契約数以上の野菜を作ることが多い。
作物・商品管理・注文管理をするために必要な作物・商品データ。
・商品名、規格、品種、価格などが情報としてありそう。
・少量多品目だと情報管理が手間。
栽培概要票・品目と栽培面積、収量と時期など、栽培の概要。・取引先に栽培概要を伝え、仕入れ約束などコミュニケーションに利用する。・さくらファームさんの栽培概要票
・ekubo farmさんの栽培管理カード
・農民連さんの栽培管理記録表

販売管理

管理項目詳細・管理情報目的・管理効果課題感ツール備考・参考
<概要>・販売管理システムは、取引先に対する請求書の発行や入金管理をしたり、仕入れや支払いの管理をしたりするシステムです。取引先に対するお金の管理をします。・レシートや領収書の仕訳と会計システムへの手打ちがしんどい。
・納品書を手書きでしているが、請求先で納品書のデータをまとめて月末の請求書をスムーズに作成できるようにしたい。(島ノ環ファーム)
・Excel、スプレ
・販売王(ソリマチ)
・農業簿記12(ソリマチ)
・freee販売
・弥生販売
・ファーモ
仕入・買掛金・支払管理・システムに食わせるデータは仕入データ。
・種子、肥料、農薬の購入費用、機械や設備の購入費用などの記録。
・多品目多頻度で受注内容変更の多い農作物に向いているものが少ない
売上・売掛金・入金管理・システムに食わせるデータは売上データ。
・農産物の販売収入の記録。
納品書作成・納品書を出力するための利用しているケースが多そう。
・納品書作成を手書きで作成してる人も多く、メリットとしては急な注文や価格変更に柔軟に対応できる。デメリットはデータとして蓄積されないので、月末でまとめて請求書を作るとか原価計算ができなくなる。

会計管理

管理項目詳細・管理情報目的・管理効果課題感ツール備考・参考
<概要>・会計システムは、日々のお金の流れを登録して、その結果、貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)を作成するシステムです。会社全体のお金の流れを管理します。・品目別の原価の把握。
・決算報告書や財務三表の作成。
・Excel、スプレ
・会計王(ソリマチ)
・農業簿記12(ソリマチ)
・freee会計
・弥生会計
財務会計・財務会計は利害関係者(ステークホルダー)に財務状況を報告するための社外向けの会計であり、法律上、すべての企業は財務会計を行う義務があります。
※財務会計と管理会計について
・損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書の作成。
税務会計・主に所得税や法人税の税金計算のために行われる会計で、財務会計とは目的が違います。
・事業から得た所得に対して、所得税の計算と申告、納税。
・消費税や固定資産税の申告。
管理会計・管理会計は経営者などが自社の経営管理をするための社内向けの会計で、それぞれの企業が任意で行うものです。
※財務会計と管理会計について
・年間の収支計画の立案、予実管理。
原価管理・カテゴリとしては管理会計の中に入りそう。
・多くの農家さんが興味ありそうで重要なテーマの一つ。原価のなかでも「製造原価」。
・原価を計算・把握する。そのために必要なデータを蓄積する必要がある。
└圃場面積、収量
└原材料費(種、油かすなどの肥料、マルチなどの農業資材、ボードンなどの梱包資材など)
└労務費(耕耘、畝立て、肥料散布、収穫、袋詰めなどの作業時間)
└その他経費(燃料代、土地代、水道代、農機代の減価償却など)
・品目別の原価を計算して、経営改善に生かす。
→例えば収穫や袋詰めの原価率が高いから、バラで販売できる取引先を探そうなど。
・圃場単位の肥料代、労働時間、動力費、作物別の粗利を算出したい。
・原価から適切な販売価格を決める。
・栽培品目の選定に生かす。
・原価を正しく把握するために必要な情報量が多い。
・圃場別の労働時間や動力費、肥料代を蓄積するのがかなり手間。
・品目別の製造原価を求めるために配賦する計算ロジックも複雑になりがち。
・Excel、スプレ・森畠さんの原価計算表

納税・確定申告

管理項目詳細・管理情報目的・管理効果課題感ツール備考・参考
-・課税事業者の場合、年に一度。
・税理士に丸投げするケースも。
・確定申告時の作業負担を減らす。・税理士に丸投げすれば手間は省けるけどコストはかかる。・e-tax

人事・労務・総務

管理項目詳細・管理情報目的・管理効果課題感ツール備考・参考
-・勤怠管理とかいろいろ。・freee人事
・SmartHR

経営管理

管理項目詳細・管理情報目的・管理効果課題感ツール備考・参考
-・各作業の予定を立案。
・認定農業者になるときは提出が必要
・安定した営農と売上の拡大。・栽培スタイルごとに必要な情報や詳細度が異なる。
・売上や原価情報など、厳密に計画しようとすればするほど必要な情報は多くなりそう。
・Excel、スプレ

認定申請・補助金申請

管理項目詳細・管理情報目的・管理効果課題感ツール備考・参考
<概要>・給付金や補助・支援制度、補助金などを活用するため。
・認定新規就農者になれば、トラクターなど農機の購入時に補助金が出たりする。
・ゲタ対策やナラシ対策のサポートを受けることができる。
・資料作成が手間。・Excel、スプレ
就農準備資金(準備型)・研修期間中の研修生を対象に、12.5万円/月(150万円/年)×最長2年間の給付。・Excel、スプレ
認定新規就農者・青年等就農計画を作成するための情報。
→営業開始日、就農地、年間農業所得の目標、労働時間の現状と目標、作物別の作物面積、生産量、使用する機械、収支の目標など。参考サイト。
・経営開始資金(経営開始型):経営開始から最長3年間、月12.5万円(年間最大150万円)の給付。
・青年等就農資金:国が無利子で資金を融資。
・資料作成が手間。・Excel、スプレ・認定新規就農者のために松井さんが作成した資料
認定農業者・ゲタ対策。麦、大豆など諸外国と生産条件の不利がある作物生産について、経営安定のための交付金。
・ナラシ対策。米・畑作物の収入減少による農業経営への影響を緩和するための補填精度。
→融資、保険料支援など。
・認定新規就農者、認定農業者について参考サイト。
・資料作成が手間。・Excel、スプレ
その他補助金制度・資料作成が手間。

ツール一覧(機能別)

上表に登場するツールを機能別に整理。汎用の Excel/スプレッドシートはほぼ全カテゴリで使われている。

機能領域ツール(提供元)
栽培管理・営農記録アグリノート(ウォーターセル)、みどりノート(セラク)、アグリハブ(Agrihub)、KSAS(クボタ)、NORM、agrion(ライブリッツ)、栽培ナビ(パナソニック)、facefarm(ソリマチ)、トレサPRO(テクノネットワーク)
土壌診断土壌モニタリングシステム(rynun)
注文・出荷管理れんらく帳、ファーモ、自社ECサイト/自社システム、各社WEBシステム
販売管理販売王(ソリマチ)、農業簿記12(ソリマチ)、freee販売、弥生販売、ファーモ
会計管理会計王(ソリマチ)、農業簿記12(ソリマチ)、freee会計、弥生会計
確定申告e-Tax
人事・労務freee人事、SmartHR
汎用(横断)Excel、スプレッドシート

ソリマチ(販売王・会計王・農業簿記12・facefarm)、freee(会計・販売・人事)は複数領域をカバー。営農記録のアグリノートは栽培計画・圃場管理・作業記録・生育記録・土壌診断・GAP審査資料まで広く使われている。注文・出荷の れんらく帳/ファーモ は生産者⇔取引先の受発注をつなぐ点で 農産物流通システム一覧 の nimaru などと隣接する。

メモ(lint)

  • カテゴリ横断で共通する根深い課題は、(1) 少量多品目だと情報量が爆発して管理しきれない、(2) 作業・出荷の記録が日々の業務に押されて滞る、(3) ツールが多すぎて選べず初期費用・月額もかかる、の3点。
  • 原価管理(品目別の製造原価)は多くの生産者の関心が高い一方、圃場別の労働時間・動力費・肥料代の蓄積と配賦計算が重く、実践のハードルが高い。
  • 認証取得有機JASGAP)と栽培記録は情報が地続き。アグリノート等の営農記録が認証の提出資料作成を兼ねる。
  • 「備考・参考」欄の**◯◯さんの資料**(河井ファームの作付けスケジュール、森畠さんの原価計算表、松井さんの認定新規就農者資料 等)は、現場の実物フォーマットとして別途 raw/ に収集する価値がある(未収集)。
  • 未作成リンク(今後書くべきページ): 有機JASGAP原価管理営農管理アグリノートれんらく帳ファーモ

関連: 農業の登場人物農産物流通システム一覧認定農業者farmO